おっさんは戦争映画と文庫本が餌

裏町徘徊中年のガード下壁新聞

「実録・国際プロレス」辰巳出版

 

「実録・国際プロレス辰巳出版
・国プロについてこんな分厚い本が出版されようとは(623ページ)。70年代プロレスブーム時の第三局だった国プロのテレビ中継(12チャンネル製作)は高校時代、田舎の2局しかない民放の深夜再放送枠で見て、その洗練とかけ離れた佇まいが強烈に感化されたものだ
・80年頃、国プロの強力な理論的背景だったのは隅田川乱一で、初期の「本の雑誌」や末井明編集の「ウイークエンドスーパー」におそろしく魅惑的な文章を書いていた。その小論は彼の唯一の書籍「穴が開いちゃったりして」(石風社)で読めるけれども
・たとえば「国際プロレスの魅力は、他の団体のようにファン層を広げていくやり方ではなく、ファン層を限定していく結社化の方向でこそ発動される」とか。この神秘主義的な筆致と現実の国プロの泥くさい試合ぶりが脳内で撹拌されて異様な印象を作り出したのだ
・辰巳の「実録・国際プロレス」はそんなメタ的なプロレス観とは無縁に、ひたすら実証主義的行われた関係者のインタビューで構成されていて、国プロの選手たちも普通の人間だったのだと、自分の過去の呪縛から開放されたような安堵をおぼえる。国プロのDVD欲しくなったが、ちと高いな…
「実録~」は案外今まで知らなかったことも書いてありビックリ。たとえば鶴見五郎のリングネームは「無頼」シリーズの人斬り五郎(渡哲也)由来とか。ぜんぜん雰囲気違うやん。ラッシャー木村が生きていれば、どんな証言を残したか。彼の不在が残念。
ラッシャー木村が得意とした金網デスマッチは、90年代にも大日本プロレスとかで何度か行われ、ポーゴジプシー・ジョーなんか名勝負を近くで見られたけれど、また見たい。誰かやらないものか。